梅雨から晩夏にかけて、湿度がかなり高くなる時期です。
木でできている木管楽器は、湿気や乾燥など、気候によって楽器の調子は大きく変わってしまうものです。
湿度の高い梅雨からは、大切なコンクールも始まる時期ですね。
大事な時期だからこそ、楽器は常にいい状態であってほしいという声を多く聞きます。
気候だから仕方がないとはいえ、少しでも防ぐ対策をご存じでしょうか?
湿気の多い時期におきる症状
湿度の高い季節、どのような症状が起きるか、ご存じですか?よく起きる症状の中でも、特に多い症状は3つあります。
1つ目は、木の膨張により、つなぎ目のジョイント部分が固くなることです。
これはクラリネットなどに多いですね。
膨張がひどいと、一度組み立てて抜けなくなってしまいます。
2つ目は、タンポの膨張です。
湿気による水分でタンポが膨張してしまい、音孔との間に隙間が出来てしまいます。
これは、息漏れにつながる症状ですので、吹奏感が大きく変わってしまう恐れがあります。
3つ目は、外の暑さによって楽器が熱くなってしまい、音程が高くなってしまうことです。
特に吹奏楽など、音程を合わせる際に、大きな影響が出てしまいます。
- タンポ
- 音孔を塞ぐためのパーツ。木管楽器に使用されているパーツで、いくつか種類があり、今回取り上げているタンポはフィッシュスキンタンポ。他の種類のタンポは膨張しにくい。フィッシュスキンタンポは圧縮されたフェルトの上に、ブラダーという豚の腸を巻いたもの。
- 音孔
- 楽器に空いている穴。指やタンポによって塞がれる。
症状が出やすい環境、状態
症状が出るときに共通している環境があります。
まずは、演奏する場所の気温です。
湿度が高く、気温が高い場所では、症状が多く見られます。
逆に、冷房で冷えすぎている環境も、温度の差によって、楽器に負担がかかってしまい、先ほど紹介した症状が出てしまったり、クリーニングスワブやクリーニングペーパーを使用せずに、水分が残っている状態で放置したり、楽器ケースのしまってしまう状態も、症状が出る大きな原因になります。
- クリーニングスワブ
- 管楽器で使用するお手入れ用品。管楽器全般に使用され、管内の水分を取り除くもの。
- クリーニングペーパー
- 木管楽器全般に使用されるお手入れ用品。タンポと音孔の隙間からでた水分を取り除くもの。
症状の見方
先ほど紹介した症状は、放置しておくとひどくなってしまうことが多いため、早い段階で気が付くことが大切です。
症状が軽いうちに気が付いて処置できるように、症状の見方を覚えるといいでしょう。
まず、木が膨張してしまった時は、組み立て前に確認する必要があります。
楽器のつなぎ目に、ジョイントコルクがあります。
よく見ると、ジョイントコルクの前に木がむき出しになっている部分がありますよね。
まず、そこの木の部分と、ジョイントの受け側の木が接触していないかの確認をしてみてください。
木と木が接触していると膨張している証拠です。
そのまま組み立ててしまうと、ほとんどの場合が抜けなくなってしまいます。木と木が接触していた場合、そのまま組み立てることは危険です。
2つ目は、タンポの膨張の見方です。
キイを動かした際に、タンポに水が含んでいるような音(ペチャペチャしたような音)がすると、タンポに水分が含んでいることがほとんどです。
水分を一度含んでしまうと、タンポの膨張につながることが多くあります。
3つ目の音程に関しては、手の温度より楽器が熱くなっていると、症状が出ることがほとんどです。
楽器は暑すぎず、寒すぎず、常温の環境が適しています。
自分の手の温度と比べることが分かりやすい症状の見方です。
防げる対策
木管楽器にとって大切なことは、こまめに水分をふき取ることです。
クリーニングスワブを通すこと、クリーニングペーパーを使用して水分を取ることは、膨張などを防ぐことだけでなく、タンポの消耗を防ぐことにも繋がることです。
楽器はお手入れ次第で大きく状態が変わりますので、こまめに水分を取るように意識してみてください。
楽器をしまう際には、クリーニングスワブ、クリーニングペーパーだけでなく、ジョイント部の受け側の水分を、ガーゼなどでふき取って下さい。
水分が少しでも残ったまま楽器ケースにしまってしまうと、ケース内で湿度が高くなってしまい、膨張、タンポの消耗だけでなく、木の劣化に繋がります。
ケース内は密閉状態で風通しも良くないため、ケースにしまう前は丁寧にお手入れをしてからしまいましょう。
心配な方は湿度の高い季節のみ、乾燥剤などもいれるといいですね。
誰でもできる応急処置
膨張によって楽器の分解が出来なくなってしまったら、無理に抜かず、一度温度を下げてみます。
涼しい部屋に一日置いておくと、膨張が収まる可能性があります。
その際、管体の中にガーゼやクロスをいれておくと、管体にしみ込んだ水分がガーゼにしみ込みやすくなり、分解がしやすくなります。
ただし、一度抜けても、ほとんどの楽器が再度膨張するため、すぐに組み立てるのではなく、一度修理に出すようにしましょう。
タンポの膨張に関しては、一度膨らんでタンポ合わせが変わってしまうと、修理に出す必要があります。
クリーニングペーパーを挟むことで、雑音などの改善はできますが、木管楽器は自分で修理する事は危険です。
必ず専門のリペアマンに出すようにしましょう。
少しの膨張でしたら、音が出なくなるなどの状態になることは、ほとんどございません。
変化があったら、必ず修理へ
今回は、梅雨から晩夏にかけてのよくある症状をお伝えしました。
先ほど伝えた処置は、あくまでも応急処置であり、完全に治っていない状態になります。少しでも異常を感じたら、必ず修理に出しましょう。
兵藤楽器店でも、いつまでも吹きやすい状態が保てるよう、サポートさせて頂いています。
木管楽器は自分で治すことには限界があります。
少しネジを回すだけで、音が出なくなってしまうこともありますので、症状が出た時だけでなく、定期的にメンテナンスに出すようにしていただきたいです。
もしよろしければ当店でもご相談を承っております。
気軽にご相談くださいませ。
問い合わせ先:兵藤楽器掛川店0537-23-0245 管楽器リペア担当